top of page

クリシュナ 生涯:誕生から昇天まで、神の子の壮大な物語

  • sinsirokeibi
  • 1月23日
  • 読了時間: 11分

クリシュナの生涯を誕生から昇天まで、分かりやすく解説します。神の子クリシュナがどのように生まれ、幼少期をどう過ごしたのか、ラーダーとの愛やマハーバーラタでの活躍、そして最後はどのように昇天したのか。奇跡と功績に満ちた壮大な物語を読み進めることで、ヒンドゥー教におけるクリシュナ神の重要性、そして私たちへの普遍的な教えを理解することができます。


1. クリシュナの誕生と幼少期

クリシュナは、ヒンドゥー教で最も広く崇拝されている神の一人であり、ヴィシュヌ神の8番目のアヴァターラ(化身)とされています。彼の誕生と幼少期は、数々の奇跡と冒険に満ち溢れており、後の神としての顕現を予感させるものでした。


1.1 予言と誕生

クリシュナの誕生は、多くの予言と不吉な前兆に彩られていました。当時のマトゥラーの王カンサは、姉デーヴァキーの8番目の子供が自分の死をもたらすという天の声を聞き、デーヴァキーと夫ヴァスデーヴァを牢獄に閉じ込め、生まれてくる子供たちを次々と殺害していきました。

そして、ついにクリシュナが誕生する夜が訪れました。牢獄は奇跡的な光に包まれ、生まれたばかりのクリシュナは神々しいオーラを放っていました。ヴァスデーヴァは、この神の子をカンサの魔の手から守るため、激しい嵐の中、奇跡的に増水したヤムナー川を渡り、ゴークラへと向かいました。


項目

詳細

両親

ヴァスデーヴァ、デーヴァキー

誕生地

マトゥラーの牢獄

誕生の目的

カンサ王の悪政を終わらせるため、人々を救うため

誕生時の奇跡

牢獄が光に包まれる、衛兵が眠りに落ちる、ヤムナー川の水が引く

1.2 牢獄からの脱出

クリシュナの父ヴァスデーヴァは、神のお告げに従い、生まれたばかりのクリシュナをゴークラの牛飼いの長ナンダとその妻ヤショーダのもとへ連れて行くことを決意します。牢獄の門は不思議なことに開き、眠っていた衛兵たちも気づきません。増水していたヤムナー川もヴァスデーヴァがクリシュナを運ぶ間だけ水位が下がり、無事に渡ることができました。これは、クリシュナ誕生にまつわる最初の奇跡の一つです。

同時に、ヤショーダは女児ヨーガマーヤを出産しました。ヴァスデーヴァはクリシュナをゴークラに、ヨーガマーヤをマトゥラーの牢獄にそれぞれ入れ替えました。牢獄に戻ったヴァスデーヴァは、生まれたばかりの娘をデーヴァキーの傍らに寝かせました。


1.3 ゴークラでの牧童生活

ゴークラで育ったクリシュナは、牛飼いの仲間たちと無邪気に遊び、牧童生活を楽しみました。彼のいたずら好きで、それでいて愛らしい性格は、ゴークラの村人たちを魅了しました。しかし、カンサ王の追手は常にクリシュナを狙っており、彼は幾度となく危険にさらされます。幼いクリシュナは、持ち前の神通力と知恵で、プーターナーやトリンーヴァルタといったカンサの送り込んだ悪魔たちを退治し、人々を守りました。

バターを盗み食いする姿や、ゴピーたちと戯れる姿など、クリシュナの幼少期のエピソードは、インドの人々に広く愛され、語り継がれています。これらの物語は、クリシュナの人間的な側面と、神としての側面の両方を示すものとして、重要な意味を持っています。


2. クリシュナの神としての顕現

クリシュナは、ヴィシュヌ神の8番目のアヴァターラ(化身)として、数々の奇跡と功績によって神性を顕示しました。人々を救済し、ダルマ(正義)を確立するために、様々な形でその力を振るいました。


2.1 奇跡と功績

クリシュナは幼少期から超人的な力を示し、人々を驚嘆させました。巨大な毒蛇カーリヤを退治し、ヤムナー川の水を浄化した逸話は有名です。また、ゴーヴァルダナ山を持ち上げて豪雨から村人たちを守った奇跡は、クリシュナの無限の力と慈悲深さを象徴する出来事として語り継がれています。さらに、牛飼いの娘たちの衣服を隠したいたずらを通して、神であっても人間的な側面を持つ存在であることを示しました。

クリシュナが行った奇跡や功績の一部を以下にまとめます。

奇跡・功績

内容

カーリヤ退治

毒蛇カーリヤを退治し、ヤムナー川の水を浄化しました。

ゴーヴァルダナ山の奉挙

ゴーヴァルダナ山を持ち上げて、インドラ神の怒りによる豪雨から村人たちを守りました。

プタナ退治

カンサ王が送り込んだ悪魔プタナを退治しました。

様々な悪魔の退治

カンサ王が送り込んだ多くの悪魔を退治しました。

2.2 悪魔退治の物語

クリシュナは、人々を苦しめる悪魔たちを退治することで、世界にダルマをもたらしました。叔父であるカンサ王が送り込んだ数々の悪魔との戦いは、クリシュナの勇気と力の象徴です。中でも、プタナ、トシャカー、バカーなど強力な悪魔との戦いは、叙事詩や絵画など様々な形で後世に伝えられています。 これらの物語は、悪に打ち勝ち、正義を守るクリシュナの力強さを示すとともに、人々に勇気を与えるものとなっています。

代表的な悪魔退治の物語を以下に示します。

悪魔名

退治方法

プタナ

毒乳を飲ませようとしたプタナを、逆に吸い尽くして退治しました。

トシャカー

暴れ馬の姿をしたトシャカーを踏みつけて退治しました。

バカー

巨大な鳥の姿をしたバカーのくちばしを裂いて退治しました。

カンサ

暴君カンサを倒し、マトゥラーの人々を解放しました。これはクリシュナが神としての使命を全うする重要な出来事でした。

これらの物語を通して、クリシュナは単なる英雄ではなく、人々を救済し、ダルマを確立するために地上に降臨した神であることが示されています。


3. クリシュナとラーダーの愛

クリシュナとラーダーの愛は、ヒンドゥー教において神聖な愛、プレマの究極の象徴として崇められています。それは肉体的な愛を超越した、魂の結びつき、永遠の愛を表しています。二人の物語は、数多くの詩や歌、絵画、演劇で語り継がれ、人々の心を魅了し続けています。


3.1 ラーダーとの出会い

クリシュナとラーダーの出会いは、ゴークラという牧歌的な村で起こりました。クリシュナは牛飼いの少年として、ラーダーは美しく聡明な少女として、共に牧歌的な生活を送っていました。二人はヤムナー河のほとりで出会い、すぐに惹かれ合いました。ラーダーはクリシュナの笛の音に魅了され、クリシュナはラーダーの純粋な心に惹かれました。

彼らの愛は、ラーサ・リーラと呼ばれる神聖な踊りの中で最も美しく表現されています。ラーサ・リーラは、クリシュナがゴーピーと呼ばれる多くの女性たちと踊る中で、ラーダーとの特別な繋がりを表現するものです。この踊りは、魂と神の合一を象徴しており、ヒンドゥー教の神秘主義的な側面を表す重要な要素となっています。


3.2 永遠の愛の象徴

クリシュナとラーダーの愛は、単なる恋人同士の愛を超えた、深い精神的な繋がりを表しています。ラーダーはしばしばクリシュナの女性的な側面、あるいはシャクティ(力)として解釈されます。二人の愛は、神と信者の間の理想的な関係の比喩として用いられ、絶対的な献身無償の愛の象徴となっています。

ラーダーは、クリシュナへの純粋で揺るぎない愛によって、他のゴーピーたちの中でも特別な存在となりました。彼女の愛は、自己犠牲無私の献身に満ちており、神への愛の究極の形を示しています。クリシュナもまた、ラーダーへの深い愛情を抱いており、二人は互いに魂の伴侶として、永遠の愛を誓い合いました。

特徴

クリシュナ

ラーダー

象徴

神、男性原理、プルシャ

信者、女性原理、プラクリティ、シャクティ

愛の形

普遍的な愛、慈悲

献身的な愛、情熱

ラーサ・リーラでの役割

中心的存在、愛を与える者

最愛の者、愛を受ける者

クリシュナとラーダーの愛の物語は、ブラーマ・ヴァイヴァルタ・プラーナギータ・ゴーヴィンダなどの聖典で詳しく描かれています。これらの物語は、バクティ(信愛)の重要性を説き、神への愛を通して解脱(モークシャ)に至る道を示しています。クリシュナとラーダーの愛は、時代を超えて人々の心を捉え、精神的な探求の指針となっています。


4. クリシュナとマハーバーラタ

クリシュナは、インドの二大叙事詩の一つであるマハーバーラタにおいて、重要な役割を果たしています。彼は単なる傍観者ではなく、策略家、助言者、そして時には戦士として、物語の展開に深く関わっています。クリシュナとマハーバーラタの関係は、単なる戦争物語を超え、ダルマ(正義)、カルマ(業)、そしてモクシャ(解脱)といった、ヒンドゥー教の哲学的テーマを深く探求するものです。


4.1 クルクシェートラ戦争

マハーバーラタのクライマックスであるクルクシェートラ戦争は、パーンダヴァ族とカウラヴァ族という、同じ一族の二つの派閥の間で繰り広げられました。クリシュナは、パーンダヴァ族の側につき、彼らの指導者アルジュナに助言を与え、戦車御者として戦場を駆け巡りました。 彼の存在は、パーンダヴァ族にとって大きな精神的な支えとなり、勝利へと導く重要な要因となりました。

戦争に至るまでの経緯は複雑で、土地の相続争い、策略、裏切りなどが絡み合っています。クリシュナは、和平交渉の仲介役も務めましたが、最終的には戦争を回避することはできませんでした。この戦争は、ダルマとアドハルマ(不義)の戦いであり、クリシュナはダルマの確立のために尽力しました。


4.1.1 クリシュナの戦略と戦術

クリシュナは、優れた戦略家であり、戦術家でもありました。彼は、戦況を的確に分析し、パーンダヴァ族に適切な助言を与えました。例えば、ビーシュマやドローナといった強力な戦士を倒すための策略を考案し、パーンダヴァ族を勝利へと導きました。彼の知略は、戦争の行方を左右する重要な要素でした。

人物

陣営

クリシュナとの関係

アルジュナ

パーンダヴァ族

親友、弟子

ユディシュティラ

パーンダヴァ族

義理の兄弟、助言を受ける

ビーシュマ

カウラヴァ族

尊敬する人物、親族

ドローナ

カウラヴァ族

師匠の息子、複雑な関係

4.2 アルジュナへの教え(バガヴァッド・ギーター)

クルクシェートラ戦争の開戦直前、アルジュナは戦闘への迷いと苦悩に苛まれます。親族や師との戦いを前に、彼は戦意を喪失してしまいます。この時、クリシュナはアルジュナに深遠な哲学的教えを説き、彼の迷いを払拭します。これがバガヴァッド・ギーターです。

バガヴァッド・ギーターは、ヒンドゥー教の聖典であり、ダルマ、カルマ、モクシャといった重要な概念を分かりやすく解説しています。クリシュナは、アルジュナに、戦士としての義務、行為の重要性、そして神への帰依について説きます。 この教えは、アルジュナだけでなく、後世の人々にも大きな影響を与え、人生の指針となっています。


4.2.1 バガヴァッド・ギーターの核心

バガヴァッド・ギーターは、多岐にわたるテーマを扱っていますが、その核心は、「執着を捨て、義務を果たすこと」にあります。クリシュナは、アルジュナに、結果にこだわらず、自分の義務を誠実に果たすことの重要性を説きます。これは、現代社会においても通じる普遍的な教えであり、多くの人々に inspiration を与えています。

クリシュナは、バガヴァッド・ギーターの中で、自身の真の姿をアルジュナに示し、宇宙の創造主としての威厳を顕示します。 この場面は、ヴィシュヴァルーパ・ダルシャナと呼ばれ、ヒンドゥー教美術においても重要なモチーフとなっています。


5. クリシュナの晩年と昇天

クリシュナの輝かしい生涯は、晩年には悲劇的な様相を呈し始めます。栄光に満ちた時代は過ぎ去り、ヤドゥ族の滅亡、そしてクリシュナ自身の死へと向かう運命の歯車が静かに回り始めます。


5.1 ヤドゥ族の滅亡

ドワーラカでの繁栄の後、ヤドゥ族は内紛によって滅亡への道を辿ることになります。予言されたとおり、一族の男たちは酒に酔い、互いに争い始め、ついには滅亡に至ります。この悲劇的な出来事は、クリシュナ自身も予見していたと言われています。内紛の原因は、ガンディーヴァ(アルジュナの弓)と同一視される、強力な武器の呪いによるものとされています。

ヤドゥ族の滅亡後、クリシュナは深い悲しみに暮れ、森の中へと姿を隠しました。この時、クリシュナの最愛の兄、バララーマもまた、蛇の姿に戻り、この世を去ります。


5.2 クリシュナの死と昇天

孤独に森を彷徨うクリシュナは、ある日、誤ってハンターの矢に射られてしまいます。このハンター、ジャラーはクリシュナを鹿と誤認したのです。クリシュナは静かに瞑想に入り、その生涯を終えました。この出来事は、カリ・ユガ(争いの時代)の始まりを告げるものとされています。

クリシュナの魂は肉体を離れ、天界へと昇天しました。彼の昇天は、神としての役割を終え、元のヴィシュヌ神へと回帰したことを意味します。


5.2.1 クリシュナの死をめぐる解釈

解釈

内容

カルマの法則

クリシュナは、マハーバーラタの戦争において、数々の策略を用いました。彼の死は、これらの行為に対するカルマの結果であると解釈されることもあります。

神の意思

クリシュナの死は、神の化身としての役割を終え、ヴィシュヌ神に戻るための必然的な出来事であったという解釈です。

時代の終焉

クリシュナの死は、ドワーパラ・ユガ(クリシュナの時代)の終わりと、カリ・ユガの始まりを象徴するものとされています。

クリシュナの死と昇天は、様々な解釈がなされています。彼の死は、単なる肉体の死ではなく、一つの時代の終わりと新たな時代の始まりを告げる象徴的な出来事として捉えられています。クリシュナの物語は、インドの人々の心に深く刻まれ、今日に至るまで語り継がれています。


6. まとめ

クリシュナは、誕生から昇天まで、波乱万丈な生涯を送りました。神の子として生まれ、様々な奇跡を起こし、ラーダーとの愛を育み、マハーバーラタでは重要な役割を果たしました。彼の物語は、インド神話の中でも特に壮大で、多くの人々に愛され続けています。









Commentaires


bottom of page